【現代医学では】 |
現代医学では、『野球肘とは、投球時に強要される外反による靭帯等の小断裂、関節動揺を伴う痛み。』とされています。少年期では、無理な投球が離断性骨軟骨炎を引き起こす原因となり、成人では内側側副靭帯損傷を引き起こします。
やはりそれらの一般的な治療は、投球を長期間中止させ、系抗炎症剤や筋弛緩剤を処方し、温熱療法や肩のストレッチ、筋力強化などを行います。 |
【他の民間療法では】 |
民間療法では、やはり直接的な方法と言うよりはむしろ、当たらず触らずの保存療法により、自然に治るのを待つ、というのが基本です。その他一般的な、テーピング、ストレッチ、温熱など、誰もが知っている普通の処置に移行します。
当然のことながら野球肘は、体の歪みから発生するものではありません。したがって無意味な背骨の矯正や無理な関節を捻る動作からは利益を得ることはありません。
「インナーマッスルを鍛える」とよく聞きますが、本来この様な筋肉は人体に存在しません。体の内側にある筋肉、或いは肩の内側にある筋肉と言われますが、ゴムひもを引っ張るために後から定義されたようなものです。肘とは全く縁の無いものです。鍛えることと怪我を治すということは元来別々のことです。 |
【FDMでは】 |
フェイシャルディストーションモデルでは、やはり野球肘も他の損傷と同様に、正常ではなくなった肘の組織(関節、筋肉、肩、靭帯など)の結果と考えます(脱臼や断裂などの整形外科的処置を必要とするものを除く)。その原因となった動作が野球の動作であっと言うだけに過ぎません。したがってその施術法も他の損傷と同様に対応する方法で矯正し元に戻すことを目的とします。野球肩同様に唯一、他の損傷と異なる点は、患者さんの目的が『ボールを思い切り、痛みなく投げる』と言う点です。痛み無く手を動かすことが出来、力を入れても痛みが無く、重たい物を持ち上げても大丈夫、と言う状態を回復させても決して十分ではありません。したがってその施術は、実際にボールを投げ、その状態を確かめながら行われます。
また野球肘の場合、無理な投球フォームに起因する場合が多くみられます。コッキング期から加速期への移行時に、肘を極端に曲げることが肘関節や周囲の小さな靭帯への大きな負担となります。それを改善することも大事な要素となります。
殆どの野球肘の患者さんは、痛みをこらえ、無理をして練習を続け、かなりの悪化とともに訪れます。にもかかわらず、一刻も早い回復を望んでいます。実際に投球を試し、その状態に応じて矯正を行い、確実に、そして一つずつ異常な組織を正常化させることが一番の近道です。
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【どのくらいで治るのですか?】 |
ここでもまた野球肩と同様のことが考えられます。
それぞれの患者さんでその状態は異なりますので、一概に施術に必要な回数や期間を言及することは出来ませんが、平均的な肘の状態とその必要期間等についての概算基準を紹介いたします。
全ての野球肘の患者さんが、「どのくらい投げれるの?」と聞かれると必ず『50%くらいは』と答えます。しかしこの言葉は、主観的評価の誤差と『早く投げたい』と言う気持ちから出された、過大評価であり、全く査定基準になりません。したがって:
1.静止状態で痛みがあるか(終身時や安静時)
2.肘を正常に、痛みなく動かすことが出来るか(完全に伸びるか、曲げられるか。)
3.全力でボールを投げたときを100%とし、どのくらいの力で痛みなく投げることが出来るか
例えば遠投で100m投げることの出来る選手が、痛みを感じることなく30メートル投げることが出来れば、その患者さんは30%と評価されます。痛みを感じることなく投げることが出来ない患者さんは0%。投げる以前に正常な動作、例えば肘の曲げ伸ばし、背中に手を回す動作などが出来ない、或いは痛みを感じる患者さんはマイナス評価となります。夜間痛や静止状態の痛み、肘の形を左右見比べて異常があるようであれば、MRIなどの整形外科的検査が必要となります。
野球肘で来院される患者さんの平均値が、20%〜30%です。これらの患者さんは痛みなしに塁間を投げることが出来ません。この様なケースでは、全力で投球可能となるまで5〜6回を要します。また施術間隔は最低4日間は必要となりますので、合計20日位は必要となります。
FDMでの施術記録やビデオなどで、捻挫などの外傷が松葉杖から数分で走れるように、と言うケースもありますが、野球肘の繰り返された損傷による組織の弱化、患部組織の元来の繊細さなどから、ただ一度の施術から完璧な結果を得ることはごく稀なことです。
約140グラムのボールを、時速0キロメートルから140キロメートル前後まで加速させる投球運動を、完全に回復させるには、長い年月が必要でした。しかし、フェイシャルディストーションモデルでの施術では、それを大幅に短縮させることが可能です。 |
【症例集】 |
【症例2】 17歳 男性 肘の痛み
二週間前から肘の痛みを感じ、投球が出来なくなったKさんは、試合当日の早朝に母親と伴にオフィスを訪れました。
彼は上腕骨内側上顆(肘に内側の骨の突き出した部分)に投球動作により発生する刺すような痛みを訴えていました。しかし彼はその日の試合に登板しなければなりません。
私は彼のお母さんに、この損傷が一般に言われている“野球肘”であり治癒には時間が必要とされている疾患であることを伝え、もし一度の矯正で完治したなら、それは奇跡であることを伝えたうえで彼の施術にあたりました。
彼の損傷は直に筋膜組織の歪曲タイプに識別され、対応する矯正方法で還元されました。しかしながら彼に対する矯正が完全なものであるかを確かめる方法は実際に投げてみる以外にありません。
その確認は、その日の彼の試合となりました。
翌日、彼のお母さんから電話連絡があり、「残念ながら試合には負けましたが、傷みなく最後まで投げることが出来ました」と報告されました。
【症例1】 24歳 男性(社会人野球選手) 肘の痛み
約一ヶ月間の激しい肘の痛みに耐え、Oさんがオフィスを訪れたとき、彼はマウンドからホームベースまでボールを投げることが出来ませんでした。Oさんは幾度となく肘の損傷を繰り返し、正常な肘関節の機能を失っていました。過去に離断性骨軟骨炎を経験し、遊離体が関節面に挟まり込む嵌頓症状が存在し、更に肘部管症候群の絞扼性神経傷害を解決するための尺骨神経前方移行術の傷後が大きく残っていました。しかしこのときの彼の肘関節周囲の損傷は、過去の損傷の影響を受けてはいましたが、新たに損傷した筋膜組織の歪曲であると判断されました。
彼の損傷は筋膜組織の歪曲タイプに識別され、対応する方法で矯正されました。彼が全力でボールを投げられるようになるまでに、6回(約3週間)の矯正セッションが必要でした。しかしながら彼の矯正は肘関節周囲だけでは十分ではありませんでした。
そもそも彼が肘を頻繁に損傷するようになった理由を考えると、余分な負担が肘関節に掛かっていたはずです。投球動作は全身運動です。その一部に不都合が生じると、最終的にボールに力を伝達する肘や腕、手首に負担が掛かります。
彼の場合、投球動作のワインドアップ期からコッキング期での動作が制限されており、その原因は上腕筋間中隔の筋膜歪曲でした。その筋膜歪曲は肩の内旋運動を極端に制限します(背中をかく動作)。
したがって彼の投球フォームはコッキング期への移行動作が小さく、体全体を使って鞭のようなしなやかさを作ることが出来ませんでした。その歪曲を対応する矯正方法で矯正し還元させることにより、彼の投球能力は、彼の最良の時期のスピードを回復しました。
この矯正セッションを終了し一年以上が経過しますが、彼の症状の再発の報告はなく、また新聞記事などにより彼の状態が最善を維持していることが確認出来ます。
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